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映画の中のキャリア危機
「YOU’VE GOT MAIL」1998年、119分、アメリカ
ジョー(トム・ハンクス)の一族が営む大手書店チェーンが、目と鼻の先に進出してきた影響は避けられませんでした。キャスリーン(メグ・ライアン)は、亡き母から受け継いだ絵本の店を閉店する決心をします。今回は、キャスリーン(メグ・ライアン)が選んだセカンドキャリアについて着目していこうと思います。
恐らく、キャスリーン(メグ・ライアン)にとっては、予想もしていなかった“キャリア危機”でもあります。この映画のように、リストラや倒産による退職は、自らの選択ではなく、突然、訪れることが多いため、準備が不十分で精神的ダメージも大きいのです。母の代から共に働いていたバーディーも新しい人生挑戦することを励ましてくれましたが、後に、キャスリーンは店を手放す心境を、メールの中でこんな風に吐露しています。
と、どれほどショックであったか伺われますね…。それでは、こういった“キャリア危機”において、セカンドキャリアの選択や、転職について、この映画からどんなことが読み取れるか、一緒にみていきましょう
2人のセカンドキャリア/転職の違い
FOX書店に転職したジョージと作家に転身したキャスリーン
小さな絵本のお店で働いていた、ジョージを覚えていますか?
ジョーのセリフから、彼はその後、FOX書店に転職したことがわかります。それまでのキャリアを生かし、生き生きと働く姿が想像できます。ジョージにとって、最適な選択になったのかもしれません。
現実のキャリア選択や転職との共通点をあげると、同じ仕事や職種で転職をするという一般的な転職パターンです。賃金アップが望めるだけではなく、職場環境を変えることで得られるものも変わります。また、FOX書店は総合書店のようですから、別な分野を担当したり、部門や支店を異動することで、新たなキャリアを築ける可能性もあり、キャリアアップと言えそうです。その仕事や職種のキャリアを築いて間もない方や、若手の方にとって適しているキャリア選択と言えそうです。
挑戦するセカンドキャリア
本を心から愛するキャスリーンも、もちろん、ジョージと同じ選択をすることもできました。自分の店を失ったキャスリーンが、初めてライバル店であるFOX書店の児童書コーナーを訪れるシーンでは、その抱負な商品知識を伺わせていました。また、ジョーの恋人であったパトリシアは、その分野の知識が豊富で鋭い選択眼を持ってるのを買って、彼女の自分の出版社で、子どもの本の編集をオファーするとも言っていました。
ですが、いろいろ悩んだ末、キャスリーンは、小説家になる道を選んだようです。
きっかけから、どんなことができそうか、つまり、どんなことに挑戦できそうかを考えて出した答えのようです。このシーンでは、結果のことは気にせず、その選択ができたことを喜んでいるようにも見えます。
キャスリーンの背中を押したもの
こんな風に、キャスリーンが新しいセカンドキャリアに一歩飛び込む勇気は、どこからきたのでしょうか?
彼女が小説家を目指す過程は、残念ながら劇中では詳細に語られていません。メール相手が背中を押したと語っていましたが、はっきりとは、よくわかりませんでした。そのため、あくまで、想像でしかすぎませんが、次の2つをあげておきたいと思います。
自分にもできそうだという感覚や判断
そういった感覚や判断を裏付けるだけの“実績(やり遂げた経験)”
キャリアを選択する上で、自分にもできそうだという感覚や判断は、とても重要になります。また、その感覚や判断には、自分のことであっても、やはり根拠が必要です。キャスリーンは、業界でも書店員として目利きであると広く知られていたようですし、ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』が愛読書と語るだけあって、かなりの読書家なようです。また、ジョーとやりとりするメールの中からも、多くの本から得た、豊かな感性と鋭い洞察力をうかがい知ることができます。これらが、彼女に小説を書いてみようと背中を押したのかもしれません。
心配するバーディーに対して、キャスリーンは「少しぐらい蓄えは…」と答えていました。ここで言う、“蓄え”は、経済的な貯えだけを指していたのではないのです。これまで見てきたような、次の新しいステップに向けて必要なものも“蓄え”てきたように読み取れます。それは、豊かな実績や、やり遂げた経験や知識に違いありません。
キャスリーンが教えてくれたこと
仕事をしていると日々、忙殺されてしまいがちです。あたり前のように仕事をしている中で積み重ねている、内容かもしれないし、経験かもしれないし、人脈かもしれない。そういったことものを、意識的に学び、意識的に深め、意識的に蓄えておくことは、いつか役立つかもしれません。
最後に、この映画を観て感じたのは、これからの時代を生きていく上で、ますます“心”が大切になってくるのではないかなということです。20年も前の古い映画から、こんなに気づきを得られました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。